この記事は2018/04/24に書いたものです。
あらすじ
人間たちが滅ぼしてきた絶滅動物たち。
人類は自分たちの過ちを少しでも償おうと絶滅動物クローン再生プロジェクトを発足。その第一号となったのが
小谷「イザクだ。」
藤宮「イザクってあの?」
小谷「そうだ。誇り高いアルテスタイガーの最後の一頭だった。銀色の眼のイザクだよ。」
アルテスタイガー最後の一頭。銀色の目を持ちイザクと名付けられた個体であった。アルテスタイガーは美しい毛皮と薬になる骨を目当てに乱獲され絶滅へと至った。
イザクは誇り高く仲間と散り散りになってもハンターに抵抗を続けた。重油に犯されたアルテ平原の水を飲みながらでも戦っていたのである。
神山「イザク達にとっては私たち人間が根源的破滅招来体のような存在だったのかもしれませんね。」
イザクのクローン再生実験は順調に進んでいた。
しかし、研究施設を根元的破滅招来体が襲撃。クローン再生に成功したイザクは拉致されてしまう。
数日後、コンビナート地帯にワームホールが出現。巨大な怪獣が送り込まれてくる。
迎撃を開始しようとするXIGだったが、恐るべき事実が判明する。
怪獣からはクローン再生されたイザクの反応が検出されており、怪獣の正体は根元的破滅招来体によって改造されたイザクだったのだ。
藤宮はイザクは人類に復讐をしたいのだろうと判断。アグルに変身する。
イザクの攻撃をノーガードで受け続けるアグル。藤宮は倒すためではなくイザクの怒りを自分が一手に引き受けるために変身したのだった。
覚悟の上とは言えイザクの攻撃を受け続けたアグルは戦闘不能に陥り、藤宮も病院へ緊急搬送されてしまう。
藤宮を見舞う我夢。我夢には藤宮の行動の真意がわかっていた。
我夢「君はイザクの人間に対する憎しみを受け止めようとして。イザクの憎しみを癒やすにはそうするしか無いと思って。」
藤宮「ああ、俺は思い上がっていたよ。」
我夢「思い上がっていた?」
藤宮「イザクに倒された時。俺にはイザクの声が聞こえた。俺たちと同じく地球で生きる命だ。」
藤宮「俺はイザクが人間を憎んでいると思っていた。」
藤宮「でもな我夢。自分が最後の一頭だとどうしてイザクに分かる?」
藤宮「イザクは自分が最後の一頭だと知らずにその一生を戦い抜いた。」
藤宮「イザクはその時と全く変わっていないんだ。」
藤宮「イザクは生きようとしている。この星で。自分が生まれたこの地球で。アルテの虎として生きようとしているんだ。そのイザクの意志が・・・」
我夢「今度は多くの人間の命を奪うことになる。どうすればいいんだ・・・。」
主な登場人物
・高山 我夢
物語の主人公にして我らがウルトラマンガイア。
藤宮からイザクの真意を、石室から根元的破滅招来体の思惑を聞いて迷いながらもウルトラマンとして戦いに赴くことになる。
・藤宮 博也
我らがウルトラマンアグル。
かつて科学者として活動していた縁からかクローン再生計画の第一号がイザクである事を聞いていた。
アグルとしての活躍はイザクのサンドバックになることだけだったが、この行動によって二人のウルトラマンはイザクの真意を知ることになる。
・石室 章雄
冷静沈着なXIGの司令官。通称コマンダー。
人類の罪を象徴するようなイザクに対してもXIGとして平和を守るために立ち向かう。
イザクを利用した根源的破滅将来体の思惑を自分なりに推察し我夢に覚悟を促す。この頃には我夢=ガイアであると気づいていると思われる。
・梶尾 克己
イザク迎撃に出撃したチームライトニングのリーダー。
イザクと戦う際にあえてアルテスタイガーを調べて学んでいた。
・神山 篤志
チームシーガルのリーダーにして空中戦艦ピースキャリーのパイロット。
梶尾と同じくアルテスタイガーの事を学び、イザクにとっては人間こそが破滅招来体だったと語る。
・小谷
助手と共にイザクのクローン再生プロジェクトを進めていた。
藤宮とは旧知の仲。
事の顛末
XIGでは各地のコンビナートに対して警戒態勢を取っていた。かつてイザクは重油の混じった水を飲んでいた。この記憶からコンビナートを狙うはずだ。そう考えた石室の判断であった。
石室「どんなに姿を変えられても、やはりあれはアルテの虎。銀色の眼のイザクだ。」
読みは当たり再び出現するイザク。
連絡を受け迎撃に向かおうとする我夢に藤宮は警告する。
藤宮「ためらえば、お前がやられるぞ。」
出撃した我夢に石室コマンダーは自分の推察を語る。
石室「我夢。破滅招来体がなぜ怪獣となったあいつの細胞に地球生物の痕跡を残したか分かるか。」
石室「俺たちに分からせるためだ。あれは俺たち人間が絶滅させた動物だと。」
石室「しかしもし、俺たちがイザクを倒すことを躊躇すれば破滅招来体はまた絶滅した動物をイザクのように利用する。そんな事を許すわけにはいかん。」
覚悟を決めガイアに変身する我夢。
しかし、イザクの戦闘力は高くガイアは劣勢に立たされてしまう。窮地を打開するためガイアは最強形態スプリームヴァージョンを発動するも、なおも状況は互角のままであった。
一気に勝負を決めるため光線の構えを取るガイア。だったが
イザク「俺は生きる。」
イザク「ガイア!俺は生きる!」
その声を聞いたガイアは光線の構えを解き、イザクと同じく己の肉体だけで戦う事を決意する。
互角の戦いを繰り広げる両者だったが、最後はガイア渾身のスプリームキックでイザクは爆散した。
変身を解除し力なく膝から崩れ落ちる我夢。
我夢「許してくれ。」
後悔の念に囚われる我夢のそばには藤宮の姿があった。
藤宮「人間は過去に犯した過ちを自分たちの痛みとして背負っていかない限り、本当に変わったりはできないんじゃないか。」
かつて我夢が語った人類は変われるという言葉。それを信じる藤宮が出した人類が変わっていくための答えがこれであった。
登場怪獣
アルテスタイガー怪獣 イザク
人間の乱獲によって絶滅したアルテスタイガー最後の一匹だった個体。
絶滅動物クローン再生プロジェクトによって再生されたが根源的破滅将来体によって拉致され怪獣へと改造された。
その格闘能力は非常に高く、かつてハンターに追われ銃撃を浴び続けた記憶からXIGファイターの攻撃も軽々と避けることが出来る他、歴代ウルトラマンの中でも屈指のマッシブ体系であり10万t級の怪獣たちを次々と投げ飛ばしてきた身体能力を持つガイアスプリームヴァージョンを相手に互角の格闘戦を繰り広げた。これがイザクのスペックと取るかガイアに迷いがあったからと取るかは意見の割れるところ。
我夢や藤宮の思い。人類の罪の意識。根源的破滅将来体の思惑などの中心にいた存在だったが、そんなことは一切関係なく彼自身の目的はただひたすら「生きる」事であった。
ちなみにアルテスタイガーそのものは架空の存在であるが現実には同じく絶滅したカスピトラというトラが存在しており、劇中で語られたアルテスタイガーと特徴や絶滅の経緯が似ている事からモチーフになったと考えられている。
で、このカスピトラだが2009年に行われた大規模な遺伝子調査によって別地域に現在も生息しているアムールトラと遺伝子配列が非常に近い、というか瓜二つであることが判明しており「実は絶滅してないんじゃね?」という新説が提唱されている。
概要
人類が絶滅させてきた動物は数多くいます。つい先日も人間の乱獲によって数を減らしたキタシロサイの最後のオスが死亡し、残されたメス2頭が絶滅を待つだけになってしまったと報じられていました。この報道を見たことがこの記事を書くキッカケでした。
絶滅動物を題材にする作品は数多くありますが、このエピソードは絶滅動物側の視点を描く事によって「人間は悪いやつ」「絶滅させられた動物が可哀想」「絶滅しないように保護しないといけない」といったありきたりな論調さえも「人間の思い上がり」ではないかと問いかけてきます。
そして、ただ問いかけてお終いではなく人類が変わっていくためにはこれが必要なんじゃないかという結論まで提示しています。こういったところが同じ題材を扱った他の作品と大きく違うところではないかと思います。
このエピソードで脚本を担当したのはやっぱりこの人!執筆者一押しの脚本家太田愛さんです!