この記事は2018/05/14に書いたものです。
地球の人々も私の兄弟だ。
もっとも、私が兄で君たちはまだ幼い弟だがね。
ヒーローそっくりの偽物とヒーローの戦い。現代では当たり前のように行われているこの構図は初代ウルトラマンの頃から存在するヒーロー物の伝統とも言えるものです。
今回紹介するのは記念すべき初偽物。にせウルトラマンとその正体ザラブ星人です。
このザラブ星人はシリーズ通して多々出演する宇宙人なんですが今回は初代ウルトラマンでの活動に絞りますね。
登場したのは第18話「遊星から来た兄弟」。
突如発生した危険な霧。この対処に手を焼いている科特隊の前に現れてあっという間に事態を収束させた後、ザラブ星と地球を兄弟であるとして友好関係を結びたいと告げる。
が、これは全てザラブ星人が地球に取り入るための自作自演であり、真の目的は地球侵略であった。
そのことに気づいたハヤタ隊員=ウルトラマンを捕らえ監禁すると自らにせウルトラマンに変身して破壊活動を展開。こうする事で地球人のウルトラマンへの信頼を断ち切ろうとした。
ちなみにこの時ハヤタからベータカプセルを奪う事で本物のウルトラマンの出現を阻止しようとしたが、ハヤタがベータカプセルを本部に忘れていた為に奪うことができなかった(ハヤタはこれ以外にもベータカプセルを落としたり間違えてスプーンを掲げてしまったりと案外管理が雑)。
しかし、にせウルトラマンとして活動するザラブ星人の前に脱出したハヤタが本物のウルトラマンとなって現れる。
そのまま戦闘に突入するにせウルトラマンだったが本物の前には歯が立たずにせウルトラマンの正体を明かされた挙句スペシウム光線で爆散した。
その変身能力はかなりのもので現れたにせウルトラマンは本物と瓜二つであり破壊活動を行っている時も科特隊は本物と信じ込んでしまったほどである。
・・・ということになっているのだが、こちらの写真をご覧いただきたい。
全然違うやんけ!!!
どう見ても偽物やんけ!!!
と多くの視聴者が突っ込んだのは言うまでもない。
この偽物の似て無さっぷりは制作の都合によるもの。
全く同じ姿にしてしまうとどっちがどっちかさっぱりわからなくなってしまうので視聴者の混乱を避けるために微妙に違う姿にしたのです。
格ゲーの2Pカラーと同じ理屈ですね。
ただ、シナリオ的には一目で偽物とわかると話が成立しないので明らかに偽物なのに登場人物は気付かないというチグハグな展開になってしまったんですね。
これ以降ウルトラシリーズの偽物は本物と区別できるようにデザインに差異を持たせるのがお決まりとなります。余談ですが後年のウルトラマンレオに登場したババルウ星人はこのお決まりを逆手に取った演出がされていました。
ザラブ星人の等身大時のスーツアクターを担当したのは今は亡き声優の青野武氏。
元々はザラブ星人の声担当としてキャスティングされていましたが、キャラ作りの一環として自らスーツアクターを志願したとの事。さすがに巨大化した後は本職のスーツアクターが担当しています。
共演者によるとこの時の青野氏はノリノリだったらしく「こんなキツイ仕事をなんであんなに楽しそうにできるんだろう」と思ったそうな。
この後も青野氏とザラブ星人の関係は続き、担当声優が変わる事も珍しくないウルトラ怪獣の中でザラブ星人は一貫して青野氏が務めていました(青野氏が声優活動を休止し亡くなった後は別人が担当)。
本物のウルトラマンのスーツアクターを務めた古谷敏氏は自書の中でにせウルトラマンについて触れ「見た目は同じ姿なのにスーツアクターが違うだけでこんなにも印象が変わる」と気付かされ「顔が出ないスーツアクターであっても代わりなんていない!ウルトラマンを演じられるのは自分しかいないんだ!」と決意を固くしたと語っています。
その一方でにせウルトラマンにチョップする時に狙いを外してトサカの部分を叩いてしまい小指に激痛が走った事を明かしており、そのせいでウルトラマンが痛がって腕を大きく振るという人間らしい動きをしてしまったと回想しています。そして、その人間らしい動きはバッチリオンエアされました。
チョップと言えば、近年円谷プロの倉庫から初代ウルトラマンのNGフィルムが見つかったのですがその中には建物のミニチュアにチョップするも当たりどころが悪くて建物が破壊できないクッソ情けないにせウルトラマンの姿が映っていました。
なんで本物偽物仲良くチョップに関する逸話があるんですかねぇ・・・。