この記事は2019/02/26に書いたものです。
ファイアーエムブレムの記事を書いた時、関連作品で纏めてしまおうと思いましたが・・・
そんな恐れ多いことはできない!!
という事で今回紹介するのは知る人ぞ知る名作にしてある事で有名になってしまったゲーム。
ティアリングサーガです。
ティアリングサーガとは
ジャンルはシミュレーションRPG。
本作の特徴はなんと言ってもユニットのロスト。
大抵のシミュレーションゲームでは仮にユニットを失っても作り直しできたり、修理費のペナルティがあるだけで次のマップでは復活してたりするものだが、今作においては一度やられたユニットは二度と使う事が出来なくなる。
更にユニット達には容姿や性格などの個性が設定されており、ロストの際には遺言を残して逝くなどただの「駒」ではない為。ゲーム攻略の面でもプレイヤーの心情の面でも味方のロストは重い物を残していく。
・・・ん?
とまぁ、ん?と思わせたところで本作のゲーム画面をご覧いただこう。
©エンターブレイン
ついでに任天堂が誇るシミュレーションRPGのゲーム画面もご覧いただこう。
©Nintendo / INTELLIGENT SYSTEMS
そしておまけにこの2つの作品のパッケージ画像もご覧いただこう。
一枚目 ©エンターブレイン
ニ枚目 ©Nintendo / INTELLIGENT SYSTEMS
似てる!!
なんだこのゲーム!ファイアーエムブレムのパクリじゃん!と思ったそこのあなた。
それは違う。
何故なら
ファイアーエムブレムとティアリングサーガは同じ人物によって生み出された物だからだ。
ティアリングサーガが生まれた経緯
加賀昭三。
かつてファイアーエムブレムの開発会社インテリジェントシステムズに所属していたゲームクリエイターであり、ファイアーエムブレム(FE)生みの親である。
彼はトラキア776までシリーズディレクターを務めたのちインテリジェントシステムズを退社。開発会社ティルナノーグを立ち上げた。
そんな加賀氏に声をかけたのがエンターブレインである。元々FEのファンであったエンターブレインの社員の一人がティルナノーグに新作の開発を依頼。その依頼を受けて加賀氏は新作「エムブレムサーガ」を発表。
雑誌インタビューにおいて加賀氏はエムブレムサーガはファイアーエムブレム紋章の謎と同じ世界観で同作のキャラクターも登場するなど紋章の謎との関連性をアピール。エンターブレインもそういった広告を展開していた。
が、そんな宣伝を任天堂とインテリジェントシステムズが黙って見ているわけがない。
裁判
任天堂とインテリジェントシステムズはエンターブレインとティルナノーグ対して著作権侵害であると抗議。これを受けて「エムブレムサーガ」は「ティアリングサーガ」と名前を変え、前述のFEと関係性を匂わせる要素は全て排除された上で発売された。
しかし、任天堂とインテリジェントシステムズは不正競売防止法違反及び著作権侵害としてエンターブレインとティルナノーグを訴え、法廷での争いとなった。
結果は任天堂側の勝訴。
ただし認められたのは「FEとの関連性を匂わせ他社の持つブランドイメージを勝手に利用した」不正競売防止法違反の部分であり、著作権の侵害についてはゲーム内容自体は一般的なアイデアの枠をでないとして認められていない。これを知らない人からは「ティアリングサーガはFEをパクって著作権侵害で敗訴した」と勘違いされている事もしばしばである。
この裁判はゲーム業界で非常に注目されていた。独立したクリエイターが別の会社で同じようなゲームを作り裁判沙汰になったのはこれが初めてでありこの裁判の判例は
・ゲームの著作権はクリエイターではなく会社に帰属する事。
・似たようなゲームであっても内容に直接関わりがなければ著作権侵害に当たらない事。
を明確にした形になり今日のゲーム業界に大きな影響を与えている。
仮にこの裁判で著作権侵害が認められていたらドラクエを作ったエニックス、ポケモンを作ったゲームフリーク辺りは訴訟し放題になっただろうし、ゴッドイーターや討鬼伝の様なモンハンから派生した所謂狩ゲー達は生まれなかっただろう。戦国BASARAは完全にアウトになっていた。
ティアリングサーガの評価
とまぁ良くない事で有名になってしまった本作だが肝心のゲームの出来はどうなのかというと
非常にいい。
というか普通に良作名作の部類である。
さすがはFE生みの親監修だけあってやりごたえのあるシミュレーションRPGに仕上がっている。
リュナンとホームズというFE外伝の様な二人の主人公と部隊切り替えながら進めていくスタイルに二つの部隊間でメンバーを自由に入れ替えできる「編成」を加えた事で部隊編成の楽しみも生まれた。
この編成によって誰がどっちの部隊にいるかで発生するサブイベントや入手できるアイテムも変わってくるので周回プレイでも新鮮な気分で遊べるようになっている。
アイテム重視で編成すると第一回編成でリュナン軍が苦労するのは秘密だ。
ゲームシステムはオーソドックスなシミュレーションゲームで取っつきやすく、攻略マップをバラエティ豊かにする事で飽きさせない様にさせている。
また魅力的なキャラクター達が織りなす群像劇なストーリーも高い評価を受けている。
当時はFEの新作が途絶えていた時期であり、FEの最新作が難しすぎるトラキア776だった事もあって本家FEよりも好きという声も多くあった。
当たり前だが現在では中古にしか存在していない。著作権侵害は認められなかったとはいえ経緯が経緯なのでアーカイブス配信も絶望的である。もし中古で見かけたら一度手に取ってみてはいかがだろうか。
2005年にひっそりとシリーズ第二作「ベルウィックサーガ」が発売している。
ジャンルは同じくシミュレーションRPGではあるがティアリングサーガやFEとは大きくシステムを変えている。
が、その結果非常に取っ付きにくい作品になってしまった。