この記事は2017/11/08に書いたものです。 今回紹介するのは昭和第二期ウルトラシリーズ第二作目。 ウルトラマンAを紹介します。
概要
今作を語る上で外せないのが仮面ライダーの存在。 前作帰ってきたウルトラマンとほぼ同時期に始まったこの作品はウルトラマンとは違う様々な要素を打ち出した事で大ヒット。 ウルトラマンと共に日本特撮を代表するヒーローとなりました。 そんな仮面ライダーで人気を博したのが変身ポーズ。 誰でも簡単に真似が出来てかっこいい変身ポーズは多くの少年たちを虜にし、子供達はこぞってこの変身ポーズを真似していました。 これにより怪獣ブームと呼ばれる特撮ブームが変身ブームへと移行しつつある事を察知した円谷プロはブームに乗るべく全く新しい変身を持つウルトラマンを送り出すことになります。 それがこのウルトラマンA(エース)です。 ちなみに作品タイトルはウルトラマンAだが、ヒーロー名はウルトラマンエースだ。ややこしい。 今作では北斗星司(ほくとせいじ)と南夕子(みなみゆうこ)という男女2人のダブル主人公を採用。 ウルトラマンエースがこの二人に変身アイテムを託した事により、男女合体変身という新しい変身の形を生み出しました。 2人は共に防衛チームに所属するのですが、常に行動を共にできるわけではないので別れた2人がいかに落ち合いエースに変身するのかという変身に至るまでのプロセスにもドラマを生み出しています。 この男女の合体変身には性別の垣根を越えた神としてのウルトラマンという新たなウルトラマン像も込められています。 ちなみにエースが2人に託した変身アイテムは指輪。まさかの職場でペアリング。実に装着に勇気がいる変身アイテムとなっております。ウルトラの国では指輪は大きな意味を持つものではないのでしょうね。 そんなウルトラマンエースの敵役として異次元人ヤプールが登場。 シリーズ初のレギュラー悪役であり、怪獣を超えた怪獣「超獣」を生み出してはウルトラマンエースを倒すために送り込んできます。 ここも仮面ライダーの敵であるショッカーとショッカーの怪人を意識している要素ですね。 また、この構図によりウルトラシリーズにおける地球の存在が「守るべきもの」からエースとヤプールが雌雄を決する「戦いの舞台」に変わったとする考察もあります。 ちなみに仮面ライダーを意識していることがよくわかるシーンとして、敵の宇宙人が顔を隠すために仮面を装着し、オートバイを強奪して逃走。それを追う北斗が「オートバイに乗った仮面を追跡中!」と言ってのけるシーンがあります。円谷プロ、さすがに遊びすぎである。だがあなた方はそれでいい。それがいい。 毎度おなじみの防衛チームとして超獣攻撃部隊「TAC(タック)」が登場。 怪獣を超える存在である超獣に立ち向かうための専門チームで北斗と夕子もここに所属して共にヤプールと超獣の引き起こす超常現象に挑むことになります。 ・・・なのですが、超獣という人知を超えた存在を相手にしているのに隊員達はやけにリアリストが多く、超獣の引き起こす超常現象を「そんなことあるわけないだろう」と一蹴することもしばしば。 北斗が超常現象を目撃→部隊に報告→隊員「バカ言え。そんな事あるわけ無いだろう。」→北斗「本当です!信じてください!」の流れはもはやお約束。 その為、部隊の空気も悪く戦績も微妙な上に市民からの信頼も薄いようで警察と捜査権で揉めたり、エースを差し出せと要求する宇宙人に立ち向かうとしているところに市民から「抵抗なんかしないでさっさとエースを差し出してしまえばいいんだよ!」と言われたりしてます。そして、ウルトラファンからも所属したくない防衛チームとして名を挙げられております。 次作の防衛チームとは雲泥の差ですね・・・。 その作風からシリーズの中でも異色作になると考えられたので当初はヒーローの名前と作品タイトルは「ウルトラマンA」ではなく「ウルトラA」になる予定でしたが「ウルトラエース」という商品がすでに存在していたので混同を避けるために「ウルトラマンA」というタイトルに変更されました。 こうして、ウルトラセブンは仲間を得ることができなかったのである。哀れ。 そして、この変更以降ウルトラシリーズは「ウルトラマン○○」というタイトルに固定されて行くのである。 ウルトラセブンは仲間を得る機会を永遠に失ったのである。哀れ。 こうして始まったウルトラマンAでしたが残念ながら視聴率が低迷(またか)。 目玉だったダブル主人公による男女合体変身は、子供たちが真似出来ないと不評。 そりゃあ、第一話から空高く飛んで空中で一回転宙返りしてからという変身を披露しましたが、こんなの誰が真似できるというのか。
©円谷プロダクション
引用元:ウルトラマンA第1話 / 「輝け!ウルトラ五兄弟」
更に脚本家よりダブル主人公、とりわけ夕子の扱いが難しいという意見が上がります。 その結果、路線変更のテコ入れによりダブル主人公は廃止。夕子は唐突に退場回が作られ北斗一人で変身するようになります。 この夕子の突然の退場には演じていた星光子さんが一番納得できておらず、最終回でゲスト出演した際には自分の収録が終わると誰にも挨拶せずに一人でさっさと帰ってしまったと言われています。 また、そのテコ入れの一環でレギュラー悪役だったヤプールも退場。 超獣に関しても名称自体は最後まで使われましたが、ヤプールが生み出し送り込んでくるのが超獣だったはずなのに自然発生するものや別の宇宙人に使役されて現れたりと超獣という定義が曖昧となってしまい、次作ウルトラマンタロウでは怪獣よりも強い超獣よりも強い大怪獣という、もうわけがわからないよ!的な存在まで生まれる結果となりました。 こうして、新たなウルトラマンの目玉として生み出された新機軸はことごとく無かったことにされてしまい、これらの新機軸を考えたメインライターが視聴率低迷の責任を問われて降板する事態にまで発展しました。 ちなみに、このメインライターさんは降板させられた挙句「あなたが生み出したウルトラマンなんだから最終回の脚本書いてよ」と円谷プロから失礼極まりない依頼を受け半ギレになりながら最終回を書き上げたという逸話があります。それでいて彼が書いた皮肉たっぷりの捨て台詞のような劇中の台詞がエースを代表する名言として語り継がれているのだから世の中面白いものである。まぁ、台詞そのものは背景を知らずに聞けば紛うことなき名言なのは確か。 とまぁ見事に迷走してしまったウルトラマンAですが、後の作品にも繋がる大きな物を残しています。 それは「ウルトラ兄弟」という設定。 ゾフィー、ウルトラマン、ウルトラセブン、ウルトラマンジャック、そしてウルトラマンエース。彼らを兄弟の様に固い絆で結ばれた者達と設定することでヒーロー達に明確な繋がりを持たせ客演を行いやすくしました。兄が弟を助けるのに理由はいらないって事で客演に理由をつける必要がなくなったのです。 更に、彼らが父と慕うウルトラの父が初登場。神秘のヒーローだったウルトラマン達に家族という要素を与えることでより親しみやすい存在へと変化させたのです。 この路線はその後も受け継がれ昭和シリーズの他、世界観が繋がっているウルトラマンメビウスでも兄弟の存在は強調されました。 ウルトラ兄弟という言葉自体は帰ってきたウルトラマンの最終回で初登場したのですが、Aはそれを設定へと昇華したんですね。 というか、帰ってきたウルトラマン終盤の頃にはウルトラマンAという作品の構造は既にあったはずなので、先行登場的な感じで使ったんじゃないかなと個人的には思っております。 そもそも、迷走と言いますがこの時代は現代では想像もつかないほどの特撮全盛期であり、皆さんがよく知っているであろうウルトラマン、仮面ライダー以外にも数多くの特撮作品が放送されていました。このウルトラマンAの裏番組も特撮番組です。円谷プロ自体もミラーマン、ファイヤーマン、ジャンボーグAなどウルトラシリーズ以外の作品を手がけていたぐらいですからね。ちなみにこの頃はまだスーパー戦隊は始まってません。 そういった群雄割拠な特撮ヒーローはライバル番組より人気を獲得しようと様々なテコ入れや路線変更を行っていて、迷走してしまった作品も珍しくありませんでした。 このウルトラマンAの路線変更と迷走はそういった当時の世相を反映した結果であり、昭和特撮をより深く理解するために重要な作品なのです。 今に続くウルトラ兄弟の始まりとなった(ついでに今なお続くウルトラマンエースとヤプールの因縁の始まりにもなった)作品ウルトラマンAはTSUBURAYA IMAGINATIONで見放題配信中です。 是非一度ご覧ください。
INABA的オススメエピソード
第26話「全滅!ウルトラ5兄弟」 第27話「奇跡!ウルトラの父」 「宇宙で一番強い生き物」を自称するピッポリト星人が地球に出現。 エースを受け渡せ!と声高に要求するピッポリト星人に対し攻撃を開始するTACだったが、攻撃は全てすり抜けてしまう。 その状況の中で攻撃がすり抜けるからくりを見抜いた北斗と夕子はウルトラマンエースに変身。 ピッポリト星人に直接対決を挑むエースだったがその自称は伊達ではなく、追い詰められたエースはカプセルに閉じ込められその中でブロンズ像に変えられてしまう。 エースからの救援信号を受けたゾフィー、ウルトラマン、ウルトラセブン、ウルトラマンジャックは地球へ駆けつけるが、彼らを出迎えたのはブロンズ像にされた最愛の弟と高笑いを浮かべるピッポリト星人であった。 怒りに燃えピッポリト星人に挑む4兄弟だったが、巧みな戦術の前に彼らもまたブロンズ像にされてしまう。 ウルトラ5兄弟をブロンズ像に変え、高らかに勝利宣言をするピッポリト星人は地球を明け渡せと要求してくる。 侵略者に屈せず決死の抵抗を見せるTAC。だが、ピッポリト星人はあまりにも強すぎた。絶望的な状況の中、兄弟たちを救うためついにウルトラの父が降臨する。 ウルトラ兄弟という設定を全面に押し出したウルトラマンAを象徴するウルトラ兄弟総集合のエピソードであり、ウルトラの父の初登場エピソードでもあります。 宇宙最強と名乗るだけの実力を持つピッポリト星人によって苦しみながらブロンズ像へと変えられるウルトラ兄弟の姿はトラウマ以外の何物でもなく、絶望的な状況の中で降臨するウルトラの父の圧倒的な強さなど見ごたえのあるエピソードです。そして、TACが市民に信頼されていない事がよく分かるエピソードでもあったり・・・。 その一方で、苦しみながらブロンズ像になったはずのウルトラ兄弟たちがブロンズ像になったときに各々でポーズを決めている事がちょくちょくネタにされています。 ついでに余談ですがピッポリト星人はその後の作品にも登場し、ウルトラ戦士をブロンズ像に変えるのですが、なぜかブロンズ像にされたウルトラ戦士はみんなポーズを決めており、ウルトラマンゼロはブロンズ像に変えられた仲間を見て「そのポーズは一体・・・」とツッコミをいれたりしています。
紹介動画
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