ウルトラマンの話

作品紹介 ULTRAMAN(映画)

2018年3月10日

概要

この記事は2018/03/18に書いたものです。

突然だが皆さんは2004年に公開された「ゴジラ FINAL WARS」という映画をご存知だろうか。
世界的に有名なゴジラシリーズの当時の最新作であり、50周年記念作品にして最終作と銘打たれた映画である。
その為、東宝も気合を入れて作成したのだが興行収入は12億円。
観客動員数はシリーズでもワースト3位と思ったよりも振るわず、そのささやかな成績は「怪獣映画冬の時代」と呼ばれることになった。

だが、彼らは知らない。
同じ2004年。その興行収入12億円の影に隠れた興行収入1億5千万という大爆死特撮映画があったことを。
しかし、成績と映画の面白さは比例しない。隠されすぎた不遇の名作。
それが「ULTRAMAN」である。

あらすじ

西暦2004年。

地球に現れた謎の青い飛翔体を調査していた海上自衛官の有働貴文は飛翔体に取り込まれ凶悪な怪物、コードネーム「ザ・ワン」へと変貌。
硫黄島の研究室で監禁されていた有働は自衛官たちを殺して脱走し行方を眩ませた。

それから数ヶ月後。

航空自衛隊のイーグルドライバー真木舜一は突如現れた赤い飛翔体に対しスクランブルをかけるが彼のイーグルは赤い飛翔体と衝突、墜落してしまう。
しかし、絶望的状況にありながら彼は骨折すらしていないという奇跡の生還を果たした。

その後は家族とともに過ごしていた真木だったが「ザ・ワン」の前例から彼を危険視したバイオテロ研究機関「BCST」によって真木は拘束、監禁されてしまう。
そこへ真木の抹殺を狙ってザ・ワンが出現。自衛隊は奮戦するが恐ろしいザ・ワンの恐ろしい進化速度の前に為す術もなく撤退を余儀なくされ真木自身も痛烈な一撃によって意識を失ってしまう。

絶体絶命と思われたその時、真木の体は光に包まれ銀色の巨人「ネクスト」へと変貌を遂げる。

対峙するネクストとザ・ワン。これは巨人とビーストの長き戦い。その始まり。

主な登場人物

真木 舜一(まき しゅんいち)
主人公。34歳の航空自衛官で病気の息子を持つ一児の父。
幼い頃から自衛隊の戦闘機で空を飛ぶことに憧れ念願叶ってF−15Jイーグルのパイロット通称イーグルドライバーとなったが、病気の息子のことを案じて退官を決意した。
退官を間近に控えていたある日、突如現れた赤い飛翔体に対しスクランブルをかけるが飛翔体と衝突事故を起こし機体は山中に墜落。彼自身も死亡したかに思われたが衰弱していた以外は骨折一つしていない奇跡の生還を遂げた。
その後は予定通り退官し民間のセスナパイロットに就職。家族と過ごしていたがBCSTによって拘束されてしまう。
そこで地球に飛来したザ・ワンの事や自分も危険な存在になっている事を知る。
そして直後に現れたザ・ワンに対し銀色の巨人コードネーム「ネクスト」となって立ち向かった事で戦いへと巻き込まれていく。
34歳という年齢設定は主役ウルトラマンに変身する地球人としては最高齢である。それでも主役ウルトラマンを演じた俳優の年齢ではまだ上がいる。


水原 沙羅(みずはら さら)
BCSTの監査官の女性。ザ・ワンに対する作戦行動を一任されている。ヒロインというよりはもう一人の主人公格。
奇跡の生還を果たした真木を「ザ・ネクスト」というコードネームをつけて監視下に置き、強引な手段にて拘束、監禁していた。
全てはザ・ワンが邪魔者として予言していた赤い飛翔体と接触した真木を餌に使うためであり、当初は真木の事をザ・ワンと同じ化け物としか見ていなかった。
しかし、ザ・ワン襲撃の際に恐ろしい進化速度を目の当たりにした事と銀色の巨人に変貌した真木に命を救われた事からネクストとザ・ワンは違うという考えに至り真木にネクストとして共に戦う事を依頼する。
ザ・ワンに対し感情的になりやすいがこれはザ・ワンに取り込まれた有働が彼女の婚約者だったからである。


有働 貴文(うどう たかふみ)
海上自衛官で沙羅の婚約者。地球に現れた青い飛翔体を調査に赴いた際、飛翔体に飲み込まれ異形の怪物ザ・ワンへと変貌してしまった。
変貌した段階で彼の存在は全て食われて消滅していたのだがザ・ワンは自分を追って来る沙羅と有働の関係を利用するために有働の姿や意識を意図的に残している。
ちなみに沙羅との出会いは、彼女が抱えていた大量の紙資料を床に落としてしまい、たまたま近くにいた有働がそれを拾う手伝いをしたというもの。余談だが同年に放送されていたテレビシリーズの主人公と恋人も似た様な出会いをしている。


真木 継夢(まき つぐむ)
真木の息子にして原動力。先天性の血液欠陥により余命一年の宣告を受けている。
真木は彼の側にいるために自衛官を辞めたが、彼自身はイーグルで空を飛ぶ父親を誰よりも尊敬し憧れている。
病魔に侵されながらも純粋さを失うことはなく彼の存在と言葉が真木に戦う決意をさせた。今作のヒロイン。


真木 蓉子(まきようこ)
真木の妻。危険な任務に赴く夫と病弱な息子を常に心配している。
彼女の存在もまた真木の戦う理由である。


倉島 剛(くらしま たかし)
真木の同僚にして親友。彼もイーグルドライバーである。
上層部より真木の家族の監視を命じられたが真木の事情をある程度察しており任務に殉じながらも本来なら許されない真木と家族の面会時間を作るなど任務よりも親友のために行動する。
ネクストとザ・ワンの最終決戦では自らF-15Jイーグル部隊を率いて真木の援護に現れた。 

登場ヒーロー

ウルトラマン・ザ・ネクスト

ザ・ワンを追って現れた赤い飛翔体。
スクランブル発進してきた真木のイーグルと衝突してしまい彼を救うために一体化した。
真木の意思を尊重した一体化であるため真の力を発揮することが出来ない不完全な変身しか出来ない状態となっていたが、真木の息子を守りたいという思いから完全な一体化を果たしてザ・ワンへと挑む。
剥き出しの筋肉繊維に鎧を纏っているように見える姿やカラータイマーにあたるエナジーコアがピコンピコンではなくドクンドクンと人間の心臓のような鼓動を見せるなど歴代ウルトラマンの中でもそのデザインは異質。
デザインは間違いなくウルトラマンなのだがスーツは仮面ライダーに近い。
シワが多めなマスクの形状は初代ウルトラマンの最初のマスク。通称Aタイプを元にしている。

登場怪獣

ビースト・ザ・ワン

地球に最初に飛来した青い飛翔体。調査に当たっていた有働を吸収し彼を怪物へと変貌させた。
初めは硫黄島の研究施設に監禁されていたが脱走し、自分の邪魔者であるネクストを倒すために暗躍する。
当初は2m程度の存在であったが周囲の生物を取り込むことでその特性を獲得しながら巨大化していった。
知性も発達しており自分を倒しに来る赤い飛翔体(=ネクスト)の出現を予見していたり、有働の姿を使うことで沙羅を惑わせるなど狡猾な面を見せた。
こちらもネクストに劣らず異質なデザインとなっておりウルトラ怪獣というよりは海外映画に出てくるクリーチャー。
巨大化していく毎にウルトラ怪獣らしさがみえる様になったが、それでも十分異質。
デザインモチーフはベムラー。

概要

2004年に公開された映画作品。

ウルトラマン第一話「ウルトラ作戦第一号」を原作としたリメイク作品で、コンセプトは「現代(2004年)日本においてウルトラマン第一話が起きたらどうなるか」というもの。
その為リアルが追求されており、シリーズお決まりの特殊部隊や特殊兵器の類は存在せず現実の自衛隊が登場します。F-15Jイーグルの発進シーンに実機の映像を使っているなど防衛庁の全面協力の元で作成されています。
リアリティを追求したウルトラシリーズと言えばウルトラマンガイアやウルトラマンXがありますが、あちらは特撮世界にリアリティを求めたのに対し、こちらは現実世界に特撮を登場させるといった感じ。
特撮面においても現実の映像+CG合成と特撮セットの撮影を巧みに組み合わせることであたかも現代の新宿にウルトラマンと怪獣が出現し、激しい戦いで新宿が破壊されていく様な錯覚を覚える物となっています。
また、特撮面での最大の最所はなんと言っても新宿上空でのネクストとザ・ワンの空中戦。空中における激しいカメラワーク通称「板野サーカス」を確立させた板野一郎氏が空中戦の管理者として参加しており15年近く前のCGとは思えない程の見応え、完成度を誇ります。重力に捕われず自由に空を飛び回るウルトラマンと怪獣の姿は男の子(とお父さん)の心を見事に鷲掴みにしてくれました。


ネクストとザ・ワンのデザインを始めウルトラシリーズとしては全体的に異質な雰囲気があるためよく大人向け作品として紹介されますが、円谷プロとしては「親子で楽しめる映画」として作成しています。
なので、話は暗くなりすぎることもなくグロテスクなシーンもありません。ぶっちゃけネクサスに比べればヌルい。
子供のために頑張る父親を主人公とする事で分かりやすく暖かい家族の物語が展開されている割と王道な怪獣映画です。継夢君マジ天使!!
確かにザ・ワンのデザインや言動は子供に恐怖心を抱かしてしまうかもしれません。ですが、それについて監督は
「確かに子供にとっては怖いところもあるかもしれません。だからこそ、お父さんは横で一緒に見てあげてください。そして子供が怖がっていたら手を握ってあげてください。」
と述べております。
この映画は間違いなく親子向けの映画なのですね。

さて、本作はファンの間で語り継がれる名作なのですが上述の通りウルトラマンとしては異質な作品です。
そしてこの作風に難色を示したのが映画の配給元である松竹でした。
従来の作品とは違いすぎる本作を松竹は売れないと断定。上映館も少なめで大した宣伝も行わなかったのです。この頃の松竹は「いい映画は放映しているだけで人が来る」という考え方をしていたらしいですね。
その一方でこの数年前には当時のメディアを騒がせたウルトラマンコスモス主演俳優誤認逮捕事件があった関係でウルトラマン自体が腫れ物扱いだったとも言われています。
まぁ、この辺はファンの間での憶測がふんだんに含まれている部分なので真相は誰にもわかりません。事実として大した宣伝がされず上映館も少なかった本作は興行収入にして1億5千万円という爆死という他ない結果になりました。
参考までにこの次の劇場版ウルトラマンメビウスは6億8千万円。その次のウルトラ8兄弟は8億4千万円。近年の映画でこの映画よりもさらに上映館の少ない劇場版ウルトラマンオーブでも2億円は達成しているので、この数字がいかに低いか分かりますな。この結果のせいで予定されていた続編も企画倒れになってしまいましたからね。作品の出来自体は素晴らしいのでDVDは好調に売れたそうな。

とはいえ、興行収入と作品の出来は比例しない!
散々大爆死と言われ原作ファン激おこの映画だって何十億の成績を残すことはよくあるからな!!
この映画だって宣伝さえ、宣伝さえしっかりやってくれれば・・・!!
まぁ、これを反省したのかこれ以降の映画はめっちゃ宣伝する様になりましたね。めちゃイケに出たりぴったんこカンカンに出たり。
今だってしつこいぐらいに劇場版ジードの宣伝してるしね。転んでもただでは起きぬというやつです。

映画「ULTRAMAN」はAmazonプライムビデオで見放題配信中です。※2022年7月現在 当作品はネット配信されていません。

上映時間90分とさっくり見れる映画だよ!TVシリーズみたいにガッツリ時間をとる必要はないよ!
隠されすぎた名作。ぜひご覧ください!

紹介動画

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ULTRAMANはなぜか見れないけど、ウルトラシリーズ見放題!

以下、他作品に関わるネタバレ

今作は「ULTRA N PROJECT」の成果物の1つであり、TVシリーズ「ウルトラマンネクサス」の前日談にあたります。
「ウルトラマン・ザ・ネクスト」は「ウルトラマンネクサス」が力を失った状態の姿なのです。ネクサスも宇宙の守り神と呼ばれる「ウルトラマンノア」が力を失った状態ですからノアの力の大部分を失っている状態です。
本作の最後でザ・ワンはネクストによって倒され細胞レベルまで分解消滅させられますが力の大半を失っているネクストの状態では細胞レベルまで分解はできても細胞を殺すことはできず、世界に散ったザ・ワンの細胞と地球の生物が融合することでネクサス本編に登場するスペースビーストが生まれるのです。
なので各スペースビーストは元になった動物の特徴を兼ね備えた存在となっているのですね(クトゥーラは何と融合したんだ?)。
ザ・ワンは全ての元になったビーストでありネクサスに登場したスペースビースト達よりも強いと言われている他、全てのビーストが一つとなりザ・ワンに戻ろうとした結果、ネクサス本編における最強のビースト「イズマエル」が生まれたと言われています(ザ・ワンとイズマエルどっちが強いのかはウルトラファンの永遠に続く答えのない議論)。

スペースビーストには人々の恐怖を力に変えるという特性があり、人々がビーストを知っていると「いつか自分が襲われるんじゃないか」という潜在的な恐怖が生まれ、それがビーストの力になってしまいます。
そのため、存在を隠蔽するために大規模な記憶抹消が行われておりネクサス本編において本作における新宿でのネクストとザ・ワンの決戦は「新宿大災害」という自然災害として隠蔽され人々の記憶と世界の記録から抹消されています。
しかし、ネクサス最終回においては新宿に現れた全ての元凶「ダークザギ」とそれに立ち向かうネクサスの姿に人々はかつて新宿で戦った「ウルトラマン」の存在を思い出します。
人々の中に芽生えたウルトラマンがいてくれるという希望がネクサスに力を与えてウルトラマンノアとして完全復活を遂げる事になり、ザ・ワンとの決戦の地新宿でダークザギは討ち滅ぼされます。

つまり地球におけるノアの物語は新宿で始まり、新宿で終わりを迎えたのですね。

ということなので、この映画を見たらそのままネクサスも全話見ましょう!なぁに!3クールしかないから他のシリーズよりもさっくり見れるさ!
逆にネクサスを全話見たあなた!ぜひともこの映画も見ましょう!でもって見終わったらまたネクサスを全話見ましょう!なぁに3クール(ry









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