この記事は2021/09/24に書いたものです。
紹介動画
今日投稿した円谷プロ買収の経緯。
それについては動画を見ていただくとして、参考文献にした「ウルトラマンが泣いている」について。
参考書籍
円谷プロの内情が生々しく書かれたこの本。
具体的な数字を元に話しているところは信憑性があると考えていい思いますが、それ以外のところはどうなのか。
書籍の内容に思うこと
私が読んだ感想としてはこの著者はなかなかプライドの高い人物で自らのミスを素直に認められないのではないかと思いました。
また、三代目社長である円谷皐氏とその息子にして四代目社長である円谷一夫氏については思う所があるようでかなり辛辣に書かれています。が、これらは当人からの反論がない状態での一方的な物です。また一夫氏に関しては他の本で好意的に語っている方がいるのでこの本だけで評価しないほうが良いと思います。皐氏に関しても会社経営に関する理念などをご本人から聞いてみたいものですが、それは既に敵わぬものです。
一方で自分が経営していた時は経営は上向いていた。と書かれていますが巻末の方に描いてある円谷プロ追放後の中華ビジネス失敗の顛末を読むにこの方にまともな会社経営が出来るとは思えず、自分が経営していた時は~というのは「俺は悪くねぇ!」という自己弁護ではないのかと思えてしまいます。
また、どうにも「初代至上主義」な所が強いようで
・「平成に入ってからのグッズ商法は玩具メーカー主体になってしまった。かつては円谷プロが主体でやっていたのに。」と述べているが、第二期昭和シリーズの頃からスポンサーの意向によって番組作りや怪獣の造形を変えないといけないということは当時のスタッフから証言されておりこの認識は誤り。
・「作れば作るほど赤字」というのはどのシリーズも変わらないのに、初代を持ち上げそれ以外のウルトラマンは「ウルトラマンの亜種」と切り捨てる。
この中には自分が社長だった頃に手掛けたネクサスも含まれており、この人は自分が作っていたウルトラマンが好きじゃなかった様である。
・時代に合わせてウルトラマンの姿やコンセプトを変えたことを「円谷プロ最大の失敗」と称し、「男はつらいよ」や「水戸黄門」の様に偉大なるマンネリではダメだったのかと書いているがこれは結果論の後出しでしかない。
そもそも例に上げた水戸黄門も男はつらいよも50年は続いていない。
と、認識と事実の齟齬があったり、主観が強すぎると感じる所が多いです。
また、ウルトラマンと似通っているシリーズとして「機動戦士ガンダム」シリーズを挙げていますが、著者が出会ったとあるガンダムファンの言葉として
「ガンダムは初期のクオリティやポリシーを守ろうとしている。実際は失敗した作品も多いんだけど、道を踏み外してはいないと思う」
という発言を挙げて、これこそがウルトラシリーズになかったものだと記述しています。
しかし、ガンダムシリーズもまた時代共に姿を変え「初代以外認めない」「富野監督が関わったものしか認めない」という層が一定数いながらも、それぞれの作品に良いところがあってファンが付いている作品です。
これは時代とともに姿を変え「セブンまでしか認めない」「昭和までしか認めない」という層が一定数いながらも、それぞれの良いところがあってファンが付いているウルトラシリーズと同じです。
そういった共通点がある上に上述した「最大の失敗」を同じくやっているガンダムシリーズを持ち上げてウルトラシリーズを批判する。
正直、この部分に関してはウルトラシリーズを貶めるために、たまたま都合のいい発言をしてくれたガンダムファンとガンダムシリーズを利用した様にしか思えず、ウルトラシリーズのファンだけでなくガンダムシリーズのファンにも失礼極まりないでしょう。
正直、読んだ後の感想は「今この人が円谷プロの社長じゃなくてよかったなー」でした。
もしこの人が社長を続けていたら中華ビジネスの失敗を円谷プロとウルトラマンでやらかしたってことだからね・・・。
また英明氏は後にもウルトラシリーズについて
「今のウルトラマンは、はっきり言ってウルトラマンではない。」
「オモチャが売れればいい、カードが売れればいい、ということで作っているので、スピリッツがない。」
と発言していますが、これは言ってしまえば負け犬の遠吠えでしか無い。
今のウルトラマンがグッズを売るためにやっているという側面は間違いなくあるでしょう。ですが、収益が無くては作品が作れないことは身を持って理解されていることでしょうし、そもそもウルトラマンが今の形になったのはあなた方一族がやらかしたことのツケである。ということを自覚されてはいかがでしょうか。
それと何を持って「スピリッツ」と称しているのか分かりませんが、田口監督や坂本監督を始めとした制作スタッフ。岩田栄慶氏を始めとした出演陣の皆さまがお金儲けのためにだけに作品を作っているとでも思っているんでしょうか。もしそうならここまで長く作品を続けることも多くの人を楽しませることもできないでしょう。
作品を見てもインタビューなどを聞いても今ウルトラマンに関わっている人たちが自分たちのこだわりと魂を込めて作品を作っていることはよく分かります。自分が関われなくなった作品を負け惜しみで貶しているだけではないでしょうか。
それに創業者である円谷英二氏は常々「子供たちに夢を」と語っていましたが、「スピリッツ」とやらにこだわって作品が作れなくなってはそれこそ創業者の思いを果たすことは出来ないのではないでしょうか。
むしろ「子供たちに夢を」という思いを受け継いだのは円谷一族ではなく現在ウルトラシリーズに関わっている皆様なのではないかと思うのです。
ウルトラマンが泣いているのなら、泣かせてしまったのは誰なのか。